3月8日は国際女性デー【世界32カ国の中堅企業の経営幹部における女性比率】日本は調査対象国中最下位を継続

1

~ 3月8日は国際女性デー ~

世界32カ国の中堅企業の経営幹部における女性比率

日本は調査対象国中最下位を継続

 

太陽グラントソントンは、2019年10月~11月に実施した非上場企業を中心とする中堅企業経営者の意識調査の結果を公表した。この調査は、グラントソントン加盟主要32カ国が実施する世界同時調査の一環である。

・世界32カ国の「経営幹部の女性比率」の平均は前回調査から横ばいの29%

・日本の中堅企業の「経営幹部の女性比率」は12%で引き続き最下位

・日本の「女性不在の企業比率」は世界水準から大きく離れ依然として過半数を占める

 

世界32カ国の中堅企業経営者に、「自社の経営幹部(※1)の女性比率」について尋ねたところ、全調査対象国32カ国の平均は29%と、2019年3月発表の前回調査結果から横ばいであった。2004年の調査開始以降、ゆるやかな増減を繰り返しながらも、概ね上昇傾向にあったが、今回調査では30%の大台に達することなく停滞する結果となった。(全対象国の経営幹部の女性比率の推移はp.6の表5を参照)

 

日本は対象国中最下位、調査対象各国との差も顕著

日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は12%で、前回に引き続き調査対象国中、最下位であった。低水準ではあったものの、10ポイント増の飛躍的な改善をみせた前回調査の結果とは対照的に、今回は3ポイント減とマイナスに転じた。さらに、ほか対象国と比較してみると、ワースト2位の韓国とは5ポイント、トップ1位のフィリピンとは31ポイントの差が開き、日本の中堅企業における女性の躍進に向けた施策改善の余地を改めて認識させられる結果となった。

 

太陽グラントソントン パートナー 渡邉りつ子(公認会計士)は、次のように述べている。「多くの日本企業で女性活躍の取り組みが行われているものの、他国でのより積極的な取り組みの結果、相対的に日本の順位が上がらない結果となった。また、経営幹部の女性比率改善のために「特に対策をとっていない」と回答した日本の経営幹部が36%おり、企業の認識や対応には温度差がみられる。取り組みの成果の発現には一定の時間がかかるため、いま行動を起こすことが将来の変化をもらたすために重要であることを国際女性デーを機に再確認していきたい。」

 

表1:経営幹部の女性比率表2:経営幹部の女性比率の推移表3:経営幹部に一人も女性がいない中堅企業の比率(%)表4:経営幹部の女性比率改善のために取っている施策(%)図表:役職別女性管理職を有する企業割合(企業規模別)参考資料 表5:経営幹部の女性比率の推移(%)

半数以上の国が向上、1位にフィリピン

国別に見ると 「経営幹部の女性比率」が今回もっとも高かったのはフィリピンで43%(前回比+6ポイント)、次に南アフリカの40%(前回比+16ポイント)が続き、いずれも40%台の高水準もさることながら、前回からの大幅な改善を記録した。そのほかの国では、タイ(34%、前回比+14ポイント)、メキシコ(37%、前回比+11ポイント)、マレーシア(33%、前回比+11ポイント)などでの二桁改善が目立ち、前回比で改善をみせた国は32カ国中20カ国であった。対照的に、顕著な低下を示したのは、前回第2位であったオーストラリアの28%(前回比-14ポイント)と韓国の17%(前回比-13ポイント)であった。

主要国では米国が28% (前回比-3ポイント)とわずかに低下した一方で、英国は29% (前回比+4%)、中国は31%(前回比+3ポイント)と若干ながらも向上した。

 

日本は「経営幹部に一人も女性がいない」中堅企業の割合で圧倒的トップに

経営幹部に一人も女性がいない中堅企業の割合は、前回同様日本が52%と調査対象国中で最も多く、次いで韓国(35%)、アルゼンチン(28%)となった。調査対象国平均は前回と同様に13%に留まり、大きな変化は見られなかったものの、32カ国のうち19カ国で低下がみられ、特にアルゼンチン(-15ポイント)、トルコ(-10ポイント)が二桁代での大幅な減少を示した。

 

経営幹部の女性比率改善のための施策:日本の中堅企業の取り組みは増加傾向

経営幹部中、女性比率を維持もしくは増やすために取っている施策について(複数回答可)聞いたところ、日本では、「柔軟な働き方を可能にする」が30%と最も多く、次いで、「発展的な業務に触れる機会を平等に与える」が28%であった。

さらに日本では、女性比率改善のために取っている施策内容を尋ねた9項目のうち、7項目において回答者割合の増加を記録した一方で、「特に対策は取っていない」と回答した割合は前回調査より9ポイント減の36%となり、全体的に改善傾向をみせた。日本の中堅企業の経営幹部の女性比率は依然として低水準ではあるものの、各社における改善への認識は着実に強まっていることがうかがえる結果となった。

 

調査国全体では 「発展的な業務に触れる機会を平等に与える」、「インクルーシブな企業文化を構築する」(34%)が最も多く、「柔軟な働き方を可能にする」(31%)が続いた。

 

ーーーーーーーーーーーーーー

世界32カ国 中堅企業の経営幹部における女性比率

矢島洋子(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社 主席研究員)

 

 日本の中堅企業における「経営幹部の女性比率」は、残念ながら昨年に引き続き、調査対象国中最下位であった。日本では、2015年9月に施行された「女性活躍推進法」により、従業員301人以上の大企業をターゲットに、本調査でいうところの「経営幹部」の増加に資する取り組みが推進されている。法律の直接的なターゲットは大企業であるが、その影響は中小中堅にも及んでいるとみられ、国内の調査では、いわゆる「女性管理職比率」は堅実に増加する傾向がみられる。しかし、諸外国の変化のスピードにはまったく追いついていないことがわかる。

 また、女性管理職として増加しているのは、主には「課長相当職」であり、本調査でいうところの「幹部」(部長相当、役員層)となると、まだ育成・登用は緒についたばかりである。本調査では、「経営幹部に一人も女性がいない」中堅企業の比率もみているが、こちらでは日本は不名誉なことにトップである。厚生労働省が毎年実施する調査で役職別、企業規模別に、女性管理職の「いる」企業割合をみていくと、課長相当や部長相当は、企業規模が大きくなればポストも多くなるため、割合が増加する傾向にある。一方、役員に関しては、従業員100人未満の中小企業でむしろ割合が高く、300~999人で底を打ち、それ以上の大企業では割合が上昇する傾向にある。この傾向は、おそらく日本だけのものではないと考えられるが、100人未満の企業では家族経営も多く、課長や部長に女性はいなくとも役員だけには女性がいる、という企業が少なくない。本調査で言うところの中堅企業で、女性の役員を確保することの難しさが見て取れ、企業規模に応じた施策が必要であると考えられる

 

 日本で、女性活躍推進法の施行直後に、多くの大企業が行ったのは、女性管理職の目標設定や管理職候補者の研修を通じた登用である。こうした短期的なポジティブ・アクションによる登用は、大企業ではすでに大方実施済みで、対象となる候補層がいなくなっている状況である。今後は、新たに法律のターゲットとなる中堅企業(従業員101人以上)でのポジティブ・アクションが期待されると同時に、すべての企業で、長期的に女性の活躍を可能とする環境整備を積極推進することが重要である。具体的には、今回の調査結果(表4)にある「柔軟な働き方を可能にする」施策を推進することである。日本企業が行っている施策としては、もっとも回答割合が高く、米国やEU平均とも近い割合であるが、問題は、この柔軟な働き方を可能とする取り組みが、従業員全体を対象として実施されているか、子育て中の女性など一部を対象に実施されているかである。日本の場合、未だ特別な事由のある人のみを対象とした取り組みが多い。問題は、柔軟な働き方は可能だが、一部の人が対象であるために、柔軟な働き方に応じた公正な評価が得られるよう、人事評価制度そのものを見直すところまでつながらないことにある。柔軟な働き方をしても成果に応じて公正に評価され、キャリアの見通しも立つようにならないと、長期的に見て、多くの女性が幹部までたどり着くことにはならない。この問題は、同じく表4の回答にある「インクルーシブな企業文化を構築する」という施策が、米国やEUと比べて、日本企業で低いという問題に通じるものがある。

 女性や子育て社員に限らず、すべての社員がそれぞれの求めるWLB(Work Life Balance)に従って柔軟な働き方を選択し、成果に応じた評価を受けられ、多様なキャリアを描ける。短期的なポジティブ・アクションに終始せず、柔軟な働き方や多様なキャリア形成を受容する企業文化を創ることを通じた、ダイバーシティ&インクルージョンの実現を目指す必要がある。

 

以上

 

矢島 洋子(やじま ようこ)

―――――――――――――――――――――

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

執行役員 主席研究員

政策研究事業本部 東京本部副本部長 兼 共生社会部長

近年は、特に、「ダイバーシティを推進する働き方改革のあり方」、「職場における短時間勤務の運用方策」や「多様な働き方に前提としたキャリア形成のあり方」、「仕事と介護の両立支援」に着目した調査研究・コンサルティングに従事。

 

■専門分野: 少子高齢化社会対策、ワーク・ライフ・バランス、女性活躍推進

■経歴

学歴:慶應大学法学部卒

職歴:内閣府男女共同参画局男女共同参画分析官(2004年4月~2007年3月)

大学講師など:中央大学大学院戦略経営研究科客員教授(2010年4月~)

■パブリシティなど

女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室

  https://www.murc.jp/corporate/bizdev/diversity/

「企業におけるダイバーシティ推進」(季刊 政策・経営研究 2017Vol.4)※英語版

  https://www.murc.jp/english/report/quarterly_journal/qj1704/

――――――――――――――――――

 

日本の中堅企業「経営幹部の女性比率」に関する世界32カ国同時調査-概要

 

実施期間:2019年10月~11月

 

参加国数:32カ国

(アジア太平洋地域) 日本、オーストラリア、中国、インド、インドネシア、マレーシア、シンガポール、タイ、 フィリピン、韓国、ベトナム

(EU加盟国) フランス、ドイツ、ギリシャ、アイルランド、イタリア、オランダ、ポーランド、スペイン、スウェーデン、英国*

(北中南米) 米国、カナダ、アルゼンチン、ブラジル、メキシコ

(アフリカ) 南アフリカ、ナイジェリア

(その他) トルコ、ロシア、アルメニア、アラブ首長国連邦

*調査実施当時 

 

調査対象:約5,000名の世界の中堅企業ビジネスリーダー、または経営トップ

日本からは従業員数50名以上1,000名未満の全国の中堅・中小企業(上場および非上場)から225社の意志決定権を持つ経営層が回答した。

調査について:質問表を各言語に翻訳し、オンラインおよび電話で行い、調査会社Dynata(旧社名:Research Now) がデータの取りまとめを行った。

 

利用上の注意:統計の数値は、表章単位未満の位で四捨五入しているため、総数と内訳の合計は必ずしも一致しない。

 

本件に対する問合せ:

太陽グラントソントン マーケティング・コミュニケーション 担当  田代知子

TEL:080-4156-3706(直通)  FAX:03-5770-8820  email:mc@jp.gt.com